性病の潜伏期間は種類によって数日から年単位とさまざまです。その理由は、性病の原因となる菌の発育の速度が異なるからです。また、個人の免疫力の高さや生活習慣によって個人差があります。この記事では、主な性病の特徴と潜伏期間、検査に適した期間を詳しく解説します。
この記事の監修者
国家公務員共済組合連合会虎の門病院 救急科部長
東京大学医学部救急医学 非常勤講師
軍神 正隆(ぐんしん まさたか)
1995年長崎大学医学部卒業。亀田総合病院臨床研修後、東京大学医学部救急医学入局。米国ピッツバーグ大学UPMCメディカルセンター内科、米国カリフォルニア大学UCLAメディカルセンター救急科、米国ジョンズ・ホプキンス大学ブルームバーグ校公衆衛生学MPH大学院を経て、東京大学医学部救急医学講師。日本救急医学会認定救急科専門医・指導医。2019年より現職。
性病ごとの潜伏期間と検査可能時間は?
性病の潜伏期間は種類によって異なると同様に検査可能時間も異なります。今回はよく耳にする性病8種類の概要と潜伏期間、検査可能時間、検査方法を紹介します。各症状に関しては後述していますので、ぜひ参照ください。
HIV
HIV(ヒト免疫不全ウイルス)は体内に入ると免疫細胞であるリンパ球が破壊されます。そのため、細菌やウイルスからからだを守る機能が低下し、さまざまな感染症に罹患しやすくなり、癌など命に関わる病気を発症しやすくなります。
この状態をエイズ(後天性免疫不全症候群)といいます。
HIVが完治することはありません。
項目 | 解説 |
---|---|
潜伏期間 | 2~4週間 |
検査可能時間 | 感染機会から24時間以上 |
検査方法 | ・血液検査 ・病原体の核酸検査(PCR) |
HIVは年単位で病状が進行します。
梅毒
梅毒は、「ペニシリン」の治療薬が発見されるまで不治の病と言われていました。しかし現在は、早期発見・治療で完治が期待できます。
項目 | 解説 |
---|---|
潜伏期間 | 約3週間 |
検査可能時間 | 感染機会から1ヶ月後 |
検査方法 | ・血液・抗原検査 ・顕微鏡による病変からの病原体確認 |
治療方法が確立した現在でも、梅毒は治療が遅れると命を奪われる恐ろしい性病です。
性器クラミジア感染症
クラミジアは5人中4人にほとんど症状がないため、気づかれにくい性病です。潜伏期間は1~3週間で、症状は男女で下記のように異なります。
項目 | 解説 |
---|---|
潜伏期間 | 1~3週間 |
検査可能時間 | 感染機会から24時間以上 |
検査方法 | ・性器、尿道からの分泌物や尿、口腔内から抗原検査 ・女性の場合:膣の内側の粘膜をこすって病原体を採取し、核酸検査(PCR) ・男性の場合は尿検査 咽頭部の感染の場合は、うがい液を用いて採取 |
淋病
淋菌は「淋菌」という菌が原因の性病です。淋病は各種の抗菌薬に対し耐性が高いですが、有効な抗菌薬があるため、治療可能です。
項目 | 解説 |
---|---|
潜伏期間 | 2日~1週間 |
検査可能時間 | 感染機会から24時間以上 |
検査方法 | ・性器、尿道からの分泌物や口腔から病原体分離培養 ・女性の場合:膣の内側の粘膜をこすって病原体を採取し、核酸検査(PCR) ・男性の場合は尿検査 咽頭部の感染の場合は、うがい液を用いて採取 |
性器カンジダ
カンジダは真菌というカビの一種によって起こる性病です。女性によく見られる病気で、男性の発症率は比較的低いです。
項目 | 解説 |
---|---|
潜伏期間 | 1~1週間前後 |
検査可能時間 | 感染機会から24時間以上 |
検査方法 | ・性器に症状がある場合は、綿棒で菌を採取し、顕微鏡による観察 ・男性の場合は尿検査 |
性器ヘルペスウイルス感染症
性器ヘルペスは、外部から入ったウイルスによる初感染と仙髄神経節に潜伏しているウイルスの再活性化による2つの発症ケースがあります。
項目 | 解説 |
---|---|
潜伏期間 | 2~10日 |
検査可能時間 | 感染機会から24時間以上 |
検査方法 | ・綿棒を用いた病原体の核酸検査(PCR) ・視診 |
尖圭コンジローマ
尖圭コンジローマは性器とその周辺にイボ状腫瘍が多発します。また、罹患するとHIV感染率が10倍以上高まるという報告がされています。放置し症状が進行すると悪性腫瘍へ転化します。
項目 | 解説 |
---|---|
潜伏期間 | 3週間~8ヶ月 |
検査可能時間 | 感染機会から24時間以上 |
検査方法 | ・綿棒を用いた病原体の核酸検査(PCR) ・視診 |
B型・C型肝炎
B型・C型ともに肝臓の病気です。B型肝炎の多くは性交渉で感染します。C型は性交渉で感染することは稀ですが、肛門性交など出血を伴う行為で感染する確率が高まります。
項目 | B型肝炎 | C型肝炎 |
---|---|---|
潜伏期間 | 約3ヶ月 | 2週間~6ヶ月 |
検査可能時間 | 即日検査は感染機会から2ヶ月 精密検査は感染機会から35日経過 | 即日検査は感染機会から2ヶ月 精密検査は感染機会から35日経過 |
検査方法 | 血液検査 | 血液検査 |
性病は潜伏期間でも感染するのか
性病は潜伏期間であっても感染します。潜伏期間とは感染していても症状が現れていない期間を指します。
症状が出ていないだけで、性病には感染している状態のため、正しい感染予防策が重要です。
性病ごとの症状とは

性病によって症状もさまざまです。下記にこれまで紹介した8種類の性病の症状を紹介します。
HIV
HIVに感染すると①感染初期②無症候期③エイズ発症期の経過を辿ります。
感染初期には下記のようなインフルエンザ様症状が見られ、その後無症候期に入ります。
- 発熱
- 倦怠感
- 食欲不振
- 咽頭痛
- 咳
- 下痢
無症候期は数年~10年以上続く人もいます。そのため、薬を自己中断する人も多く見られます。その場合、急激に症状が進行し、最悪の場合感染したウイルスや細菌に脳が侵食され、脳症を合併し、命に関わる恐れがあるため、薬を自己中断しないでください。
梅毒
梅毒は下記のような経過を辿っていきます。その経過を表にまとめました。
期 | 発症時期 | 症状 |
---|---|---|
1期 | 3週間~3ヶ月 潜伏期間は3~6週間 | ・性器、肛門、口などに、3mm~3cmほどのできものやしこりができる ・太ももの付け根にあるリンパ節の腫れ 男性の好発部位:亀頭と陰茎の間の部分(冠状溝:かんじょうこう)、亀頭、陰茎、性器周辺の皮膚 女性の好発部位:膣の中(子宮膣部)、大陰唇・小陰唇周辺の皮膚 男女共通の好発部位:口腔粘膜・咽頭粘膜 ※痛みやかゆみを伴わない |
2期 | 3ヶ月以上 | ・手のひら、足の裏、四肢、からだに赤~褐色の淡い発疹が出現 ・頭皮の一部もしくは全体体に脱毛が起きる ・皮膚の色素細胞が障害され、皮膚の一部もしくは複数箇所が白くなる ・手や足爪や周囲が赤く腫れる ・口腔内粘膜、咽頭粘膜、口唇に紅斑もしくは乳白色の腫れが生じる ・扁桃や軟口蓋周辺が赤く腫れる |
3期 | 3年~10年 | ・全身に腫瘍やしこりができる |
4期 | 10年以上 | ・心臓、脳に病変ができ、最終的に死に至る |
性器クラミジア感染症
男女で症状は異なります。
〈男性〉
- 排尿痛
- 性器のかゆみ
- 睾丸の腫れ
- サラサラとした尿道分泌物がでる
- 男性不妊につながる
〈女性〉
- 子宮頸癌、子宮内膜症、卵巣癌、骨盤腹膜炎を併発する
- 不妊
- 妊婦の場合は、早産・流産・子宮外妊娠の可能性
女性は自覚症状がない場合が多いため、症状が出現した時には重大な病気を併発していることがあります。
淋病
感染部位は女性は膣、男性では尿道と肛門です。男女別の症状は下記のとおりです。
〈男性〉
- 尿道のかゆみと違和感
- 尿道炎による激しい排尿時痛
- 性器から黄白色の膿様分泌物の排泄
- 進行すると精巣上体炎を発症し、男性不妊の可能性
〈女性〉
- 卵巣炎、腹膜炎、肝周囲炎を併発する
- 膿様分泌物の排泄、おりものの性質の変化
- 不妊
- 妊婦の場合は、早産・流産・子宮外妊娠の可能性
性器カンジダ
性器周辺の皮膚、女性は膣内・男性は尿道に感染します。男女別の症状は下記のとおりです。
〈男性〉
- 排尿痛と性交時の痛み
- 性器のかゆみ、発疹
〈女性〉
- 排尿痛と性交時の痛み
- 性器周辺のかゆみと発疹
- 粘度の高い白いヨーグルト状のおりもの(酒粕、チーズ状)
命に関わる場合はほとんどないですが、症状の消失と再燃を繰り返します。陰部を清潔にし、抗真菌薬の内服や軟膏処置で完治が可能です。
性器ヘルペスウイルス感染症
症状は下記のとおりです。
- 外陰部に水疱または潰瘍形成
- 発熱
- 倦怠感
2~4週間で自然治癒する場合が多いですが、仙髄神経節へ入り、不眠やストレスなど免疫機能が低下したときに再活性化し症状を繰り返します。
尖圭コンジローマ
男女別の症状は下記のとおりです。
〈男性〉
- 亀頭や陰のう、肛門のまわりに白、薄ピンク、茶色のイボができる
- イボの数が増え鶏のとさかのようになる
- 自覚症状はほとんどない(かゆみや軽い痛みを感じる程度)
〈女性〉
- 外陰部、膣、肛門のまわりに白、薄ピンク、褐色のカリフラワー様のイボができる
- イボの数が増え鶏のとさかのようになる
- 自覚症状はほとんどない(かゆみや軽い痛みを感じる程度)
B型・C型肝炎
B型・C型肝炎の大きな違いはC型肝炎のほうが、慢性化しやすく、肝硬変・肝臓がんを発症しやすいことです。
B型・C型肝炎の特徴を表でまとめました。
B型肝炎 | C型肝炎 |
---|---|
・主に母子感染、性交渉 ・成人が感染した場合、20~30%は急性肝炎を起こすが、ほとんどか感染後数ヶ月にウイルスは体内から排除され、免疫を獲得する ・数%は慢性肝炎から肝細胞癌に移行する。1%以下だが、劇症肝炎になる ・母子感染で乳児が感染すると、免疫機能が未熟なため、ほとんどが肝炎を発症せず、ウイルスを保持したまま状態になる(無症候キャリア) | ・主に血液感染(医療行為による針刺し事故や薬物中毒者などによる注射器の使いまわし) ・約60%は感染経路不明 ・約70%が慢性肝炎に移行しやすい ・慢性化した場合、20~30年後に肝硬変・肝細胞癌へ進展する |
肝炎は異物を排出しようと免疫機能が働いている際に生じる炎症です。
なので、免疫が未熟な乳児は異物(ウイルス)と認識ができず症状がでません。成長につれ、免疫機能が成熟し肝炎を引き起こす可能性もありますが、多くの場合は軽い症状で軽快し、免疫を獲得します。
肝臓は解毒作用や栄養素の合成・貯蔵・分解など重要な役割を担っています。
それゆえ元々の予備力が高く自覚症状がほぼなく病状が進行するため「沈黙の臓器」と呼ばれています。
症状が現れた時にはすでに肝炎へ移行していることが多く、下記の症状があった場合はすぐに医療機関を受診してください。
- リスト疲れやすくなった
- 食欲がわかない
- 食事を食べていても、体重が日に日に落ちて行く
- 食事に関係なく、突然、吐き気を感じる。吐いてしまう。
- こまめに水を飲んでいるのに、尿の色が濃いウーロン茶のような色
- 目や皮膚が、黄色い(黄疸)
DMMオンラインクリニックでは、24時間いつでもオンラインで医師と相談でき、診察料0円で症状に応じた薬の処方が受けられます。
医療機関の受診に抵抗がある方、すぐに相談だけしたい方は、自宅で気軽に受診してみましょう。
性病の感染経路と感染する性病
感染経路はさまざまですが、性病の種類によって異なるものもあります。下記が主な感染経路です。
性行為
膣性交は全ての性病の感染経路となります。性行為を行う際は、必ずコンドームを着用することが重要です。また互いに性病への感染がないか確認することでより安全な性行為が行えます。
口腔性交
オーラルセックスをすることで性病が咽頭に感染します。また、咽頭の性病を保持している人が、相手の性器にうつしてしまう可能性も高いです。
主に感染する性病は、梅毒・咽頭クラミジア・淋病などです。
肛門性交
肛門は便を排泄する出口ですが、性行為として使用することで性病に感染します。肛門性交をする際は、浣腸で腸内を綺麗にし、コンドームを着用してください。
主に感染する性病は、HIV、梅毒、クラミジアなどです。出血を伴う際はB型・C型肝炎の感染も高まります。
血液・体液感染
接吻や唾液が付着した食器類の使いまわしなどで感染する可能性もあります。また、血液が付着した器具の使い回しでも感染します。
主に感染する性病は、HIV、梅毒、B型・C型肝炎です。
母子感染
性病に感染している母親から赤ちゃんへ感染する可能性は高いです。その場合、先天性の身体の障害や奇形児の原因となります。最悪の場合、死に至ります。
妊娠を希望している、もしくは可能性がある人は性病検査を受けてください。妊娠前に男女ともに性病に感染していないことを確認することは、赤ちゃんの健康を守ることにつながります。
主に感染する性病は、HIV、梅毒、B型・C型肝炎です。
自宅で検査はできるのか?

性病検査に対し周りの目が気になる方も多いと思います。そのため、現在では自宅でできる簡易キットを販売しているクリニックや事業も増えてきています。
もし、クリニックや病院に足を運ぶことに対し気が引ける方は、簡易キットを試してみてください。
陽性反応が出た場合は速やかに専門医の診察・治療を受けてください。
性病を疑ったらどうすればいい?
性病に感染した人と接触したり、性病への感染が疑われた時は検査可能時間を参考に速やかに専門の医療機関で検査を受けてください。
検査結果が出るまでの潜伏期間の過ごし方
性病の検査結果が出るまでは、他者との濃厚接触は避けてください。
性病を疑ったらすぐに内科に受診を
性病は潜伏期間でも他者へ感染します。症状がなくとも、性病に感染した人と接触した場合は検査可能時間を参考に、速やかに専門の医療機関を受診もしくは簡易キットで検査を受けてください。
早期発見・早期治療は性病の種類によっては、完治できます。完治しない性病であっても進行を抑え、以前と変わらない生活を送ることができます。
DMMオンラインクリニックなら、スマホやパソコンから24時間いつでも受診可能。医師があなたの状態を丁寧に診断し、診察料0円で適した処方薬を提案します。
処方された薬は最短で当日に自宅へ配送されるため、すぐに治療をはじめたい方でも利用しやすいですよ。
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【参考文献】
・性病の潜伏期間|あおぞらクリニック
・性感染症|厚生労働省
・岡庭豊.病気がみえるvol.1消化器.メディックメディア,2021,p.280-287
・STD研究所
