シミができると顔の印象が老けて見え、気持ちも落ち込んでしまいます。シミができる原因は、紫外線のほかに、日々の生活習慣の中に隠れているかもしれません。しかし、できてしまったシミはセルフケアで改善することが可能です。
この記事ではできてしまったシミの原因と対策・予防方法を解説します。
この記事の監修者
国家公務員共済組合連合会虎の門病院 救急科部長
東京大学医学部救急医学 非常勤講師
軍神 正隆（ぐんしん まさたか）
1995年長崎大学医学部卒業。亀田総合病院臨床研修後、東京大学医学部救急医学入局。米国ピッツバーグ大学UPMCメディカルセンター内科、米国カリフォルニア大学UCLAメディカルセンター救急科、米国ジョンズ・ホプキンス大学ブルームバーグ校公衆衛生学MPH大学院を経て、東京大学医学部救急医学講師。日本救急医学会認定救急科専門医・指導医。2019年より現職。
シミができる主な原因
シミはメラニン色素が蓄積した状態です。なぜ、メラニン色素が蓄積するのか？原因は下記のとおりです。
- 紫外線
- 刺激
- 乾燥
- ターンオーバーの乱れ
ひとつずつ解説します。
紫外線
シミができる原因で一番関係しているのは「紫外線」です。
先ほどメラニン色素の蓄積がシミの原因と説明しましたが、メラニン色素は紫外線などの刺激から肌を守る役割があるのです。
通常であれば数週間から数か月単位で、表皮の下側に溜まったメラニン色素がターンオーバーにより、上へ上へと押し上げられ角質として自然に剥がれ、新しい皮膚へ成り代わります。
しかし、紫外線を受けすぎると「もっと肌を守らないと！」とメラニン色素が過剰に生成され、肌のターンオーバーが間に合わずシミを引き起こします。
刺激
肌への刺激は炎症の原因となり、メラニン色素の過剰分泌を促進しシミを作り、できてしまったシミを悪化させます。下記のような行動は日常生活で多い刺激です。
- マスクによる擦れ
- ゴシゴシと強い洗顔やタオルで拭く
- 顔を触るクセ
- 紫外線
- 髪の毛が肌に触れる
乾燥
乾燥も皮膚には大きなダメージを与えます。乾燥が肌に与える影響は下記のとおりです。
- 紫外線のダメージが受けやすくなる
- 肌のターンオーバーが乱れ、メラニン色素が残ってしまう
洗顔後は、必ず保湿ケアを行うことが重要です。
ターンオーバーの乱れ
紫外線により生成されたメラニン色素を排出し、新しい美しい肌にさせるのがターンオーバー。正常な肌なら20代であれば約28日間、30～40代であれば約45日間の周期で新しい皮膚に入れ替わります。しかし、このターンオーバーが乱れてしまうとシミは改善されず、悪化します。
ターンオーバーが乱れる要因は下記のとおりです。
- 紫外線対策をしていない
- 間違ったスキンケア
- 乾燥
- ストレス
- 睡眠の質が悪い
- 食生活の乱れ
- 喫煙
- アルコール
ほかにもさまざまな要因はありますが、大きく分けて「規則正しい生活」「正しいスキンケア」の2つがターンオーバーを促進するために重要です。
シミの代表的な種類
シミにもさまざまな種類があります。ほとんどの原因は「紫外線」や「ターンオーバーの乱れ」によるものですが、それ以外の原因でできるシミもあります。
老人性色素斑
30歳前後から50歳ででき始める「シミ」です。大小さまざまで境界がハッキリしているシミが特徴です。長時間紫外線に当たることで起こりますが、加齢による肌のターンオーバー周期が遅くなるため発症しやすくなります。
炎症後色素沈着
紫外線によるダメージや怪我、肌質に合わない化粧品を使用することで肌が炎症を起こします。炎症を起こした肌は、正しい処置をしないと色素沈着へ移行し、シミとして跡が残ってしまう可能性があります。
そばかす
「雀卵斑」とも呼ばれています。鼻を中心に、頬にできる左右対称にできる小さい斑点状のシミです。遺伝的な要素が深く関わっており、メラニン色素が少ない人に多く見られます。学童期からでき始め、思春期でピークを迎えます。中高年になると目立たなくなりますが、紫外線の影響で色が濃くなります。
肝斑
30～40代頃に好発するシミです。頬骨のあたりに広範囲にできる境界のハッキリしていない、ボヤーっとしたシミが特徴。紫外線以外に、女性ホルモンのバランスや摩擦で起こります。
できてしまったシミの対策方法
できてしまったシミはセルフケアで改善を期待できます。その対策方法を紹介します。
シミに効果的な成分を取り入れる
保湿化粧品を選ぶ際に、シミに有効的な成分が配合されている医薬品を選ぶのも効果的です。
お勧めの有効成分と効果は下記のとおりです。
| 効果 | 有効成分 |
|---|---|
| メラニン生成の指令自体を阻止 | トラネキサム酸、ナノスルフォラファン、カモミラET |
| メラニン生成の抑制 | L-システイン、アルブチン、コウジ酸、エラグ酸、ルシノール、リノール酸、ハイドロキノン、ビタミンC 誘導体 |
| 濃くなったメラニン色素を薄くする | ビタミンC誘導体、ハイドロキノン |
| メラニンの排出・ターンオーバーの促進 | ビタミンC誘導体、レチノール（レチノイン酸）、リノール酸 |
| 紫外線ダメージ軽減、保湿効果 | ツボクサエキス（CICA） |
これから紹介するシミの種類によっては、この有効成分で改善できないものもあるので、自身で何が原因でシミができてしまったのか知ることが重要です。
メラニンの生成を抑える
シミを改善・悪化を防ぐためにはメラニン色素が過剰に生成されないよう対策をすることが重要です。
メラノサイトは色素沈着の原因であるメラニン色素を生成する細胞です。このメラノサイトを抑えることで、色素沈着を改善します。
メラニン色素の生成を抑える方法は下記のとおりです。
- 規則正しい生活でホルモンバランスを整える
- 美容成分でメラニン色素を作るメラノサイトの働きを抑える
- 美容皮膚科での美肌治療
ターンオーバーを促進する
できてしまったシミを改善するために、最も重要なのは肌のターンオーバーを促進または正常化することです。ターンオーバーを促すためには、下記のセルフケアを行うことが重要です。
- 肌の保湿
- 古い角質や皮脂をしっかり落とす
- 生活習慣の改善
- 十分な睡眠
- ストレスを溜めない
- ホルモンバランスを整える
まずは、いまの生活習慣を見直してみることから始めてください。
美容皮膚科に通う
セルフケアを行っても改善されない頑固なシミは、美容皮膚科を受診することをお勧めします。費用はかかりますが、専門医のもとで専門的な治療を受けることが可能です。
美容皮膚科で行われる主な治療は、下記のとおりです。
| レーザー治療 | 広範囲の波長をもつ光を照射することで、シミの原因であるメラニン色素を分解する。 シミの種類によって医療レーザー機器を使いわけ、深いシミまで対応できる。 そばかすには有効的だが、肝斑は悪化してしまう |
|---|---|
| ピーリング治療 | 化学成分を肌に塗布し、皮膚を溶かすことで余分な角質を除去。肌のターンオーバーを促す イオン導入を組み合わせることで、有効成分が肌の奥深くまで浸透する |
専門医のもと安全で確実な施術を受けられますが、肌に一時的なダメージを与えるため、ダウンタイムという肌を休める期間が必要です。肌が弱い方やアトピー性皮膚炎がある方は、専門医と相談の上で検討してください。
新しいシミの予防する方法
できてしまったシミが改善しても、新しいシミができないよう予防をしなければ意味がありません。シミを予防する対策を紹介します。
紫外線対策
紫外線対策は必須です。毎日受ける刺激だからこそ日々の小さな対策が重要。
肌を紫外線から守るために下記の対策を行ってください。
- UVカットや帽子、日焼け止めなど紫外線対策も行う
- 日焼け止めは2～3時間おきに塗り直す
- 正しいスキンケアを行い、保湿を心がける
- UVカット素材の衣服で背中を紫外線から守る
- 手の甲まであるアームカバーや手袋を着用する
シミは顔にできるイメージがありますが、全身にできるため露出頻度が高い手・腕・背中も念入りに行って下さい。室内でも紫外線の影響があるため、自宅にいても日焼け止めを使用するなど紫外線対策を行うことが大切です。
摩擦を抑える
摩擦は、24時間365日肌にダメージを与える刺激です。顔をゴシゴシ拭かない、手が水に触れたらハンドクリームを塗る、衣服の摩擦を受けやすい箇所は、ワセリンやボディクリームを塗り摩擦から肌をガードするなど対策を行ってください。
正しいスキンケア
紫外線対策をしても肌は少なからずダメージを受けています。スキンケアは、肌を健康な状態に導き、ダメージからの回復に必要です。それゆえ、正しいスキンケアを知り、身につけることで肌のターンオーバーを促進し、シミ改善・予防が期待できます。
正しいスキンケア方法をご紹介します。
正しい洗顔
- クレンジングでメイクや余分な皮脂を落とす。肌に負担の少ないジェルやミルクタイプがお勧め
- 洗顔料を使用する前に34～38度程度のぬるま湯で予洗いする
- 泡タイプの洗顔料もしくは泡立てネットでよく泡立てる
- 顔全体を包み込むように優しく洗う。ゴシゴシと洗うと肌にダメージを与えるため、直接肌に触れないよう肌と手のひらの間の泡のクッションで洗うよう心がける
- ぬるま湯で洗顔料が残らないよう優しく洗い流す。40度以上は肌の乾燥を招く
- タオルで押し拭きする。刺激にならないようゴシゴシと拭かない
保湿ケア
洗顔後は肌が乾燥しないようにすぐ保湿して下さい。正しい保湿ケアは下記のとおりです。
- 化粧水をたっぷりと塗布し、肌に潤いを与えます。手のひらで軽く抑えることで浸透しやすく、摩擦を軽減できます。
- 乳液やクリームで油分を補い、化粧水で補給した水分を閉じ込める。オイリー肌の方が、油分が多いものを使用すると逆効果のためさっぱりタイプを選んで下さい
規則正しい生活
規則正しい生活は、ホルモンバランスを整えメラノサイトを抑制するだけでなく、肌のターンオーバーも促進します。
具体的な規則正しい生活習慣は下記のとおりです。
- ターンオーバーを促進するため、タンパク質（肉、魚）・ビタミン（果物）・食物繊維（きのこ類、緑黄色野菜）を中心に、バランスの良い食事を摂る
- １日７時間以上の睡眠を取り、肌のターンオーバーを促す
- 寝る１時間前にスマホを見ない
- １日30分を目安にウォーキングやストレッチなど、軽い運動を取り入れる
- 歩幅は広めに早歩きを意識する
- 普段から階段を使うよう意識する
- 朝起きたら朝日を浴び、体内時間をリセットする
現在の生活習慣を振り返り、できることから少しずつ始めていきましょう。
セルフケアでは消せないシミもある
前述したようにセルフケアではできないシミがあります。その場合は美容皮膚科で専門的な施術を受ける必要があります。そのシミの種類と改善が困難な理由を解説します。
そばかす
先程も紹介したシミです。
悪化させないよう紫外線対策や肌のターンオーバーを整え、促進させるセルフケアは必要ですが、遺伝的な要素が深く関わっているためセルフケアだけでは改善は困難。そばかすの場合、レーザー治療が有効的です。
脂漏性角化症
紫外線によって皮膚の表皮基底細胞に異常が起き、皮膚表面に盛り上がりいぼのような状態となります。肌の老化や紫外線、遺伝が原因とされており、セルフケアで消すことは困難です。
花弁状色素斑
花弁が散りばめられたようなシミでそばかすと似ていますが、花弁状色素斑は遺伝性ではありません。海水浴に行くなど過度な紫外線を一気に浴びた後、強烈な紫外線がメラニン色素を大量に作り出現するシミです。
肌の奥にある真皮層のダメージによって現れるため紫外線対策で悪化は防げますが、化粧品の有効成分が届きにくいためセルフケアでの改善は困難です。
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【参考文献】
・シミを消す3つの方法とシミができる原因やセルフケアの仕方｜品川クリニック
・急にシミが増える原因｜FLALU
・できてしまったシミが治るしくみ｜ハイチオーhttps://www.ssp.co.jp/hythiol/troublenavi/shimi/cure.html
・シミの対策｜くすりと健康の情報局
・シミの予防｜くすりと健康の情報局https://www.daiichisankyo-hc.co.jp/health/symptom/15_shimi/index3.html
