禁煙を決意したものの「肌がきれいになるまでどのくらいかかるのか」と不安を感じている方もいるのではないでしょうか。禁煙してから、約1ヶ月で肌の変化を実感し始めます。
ニキビの減少や肌のハリの回復など、禁煙による肌への効果はさまざまです。さらに、咳や痰の改善、風邪への抵抗力アップなど、全身の健康にも良い影響をもたらします。
この記事では、禁煙による肌への効果、禁煙しても肌に変化が見られないときの対処法について詳しくご紹介します。禁煙による肌への効果を最大限に高めるために、参考にしてみてください。
この記事の監修者
国家公務員共済組合連合会虎の門病院 救急科部長
東京大学医学部救急医学 非常勤講師
軍神 正隆(ぐんしん まさたか)
1995年長崎大学医学部卒業。亀田総合病院臨床研修後、東京大学医学部救急医学入局。米国ピッツバーグ大学UPMCメディカルセンター内科、米国カリフォルニア大学UCLAメディカルセンター救急科、米国ジョンズ・ホプキンス大学ブルームバーグ校公衆衛生学MPH大学院を経て、東京大学医学部救急医学講師。日本救急医学会認定救急科専門医・指導医。2019年より現職。
禁煙後に肌がきれいになるまでは約1ヶ月
禁煙を始めてから肌がきれいになるまでの期間は、個人差はありますが約1ヶ月程度です。タバコを吸うと毛細血管が収縮して、血流が悪くなるため、肌に栄養が行き渡らなくなります。そのため、タバコをやめれば、肌の状態は段階的に改善していきます。
皮膚の表皮は約28日間かけて細胞が入れ替わって、新しく生まれ変わります。そのため、禁煙してから約28日ほど経てば、徐々に肌の調子が良くなります。
ただし、長年喫煙していた方は、肌がきれいになるまでより長い期間が必要となるでしょう。継続的な禁煙と適切なスキンケアを行えば、より効果を実感できます。
禁煙による肌への効果
禁煙によって得られる、5つの肌への効果を見ていきましょう。
- ニキビが減る
- 顔色が明るくなる
- 肌のハリが回復する
- 肌のくすみが良くなる
- しわやたるみが改善する
タバコに含まれる有害物質から解放されると、肌本来の健康な状態を取り戻していきます。
ニキビが減る
禁煙を始めると、ニキビの発生が減少する傾向にあります。
タバコを吸うと交感神経が刺激され、皮脂の分泌が増えます。しかしタバコをやめると、皮脂の分泌が正常になり、ニキビができにくくなります。
新しいニキビが減るだけでなく、既にあるニキビも徐々に改善していくことがあります。頬やあごなど、タバコの煙が直接当たりやすい部分の改善もみられるでしょう。
また、禁煙によって血行が良くなると、肌の新陳代謝も活発になります。結果として、肌がクリアになり、ニキビだけでなく吹き出物も減少していきます。
顔色が明るくなる
禁煙を続けると、顔色が明るくなっていくのを実感できるでしょう。タバコに含まれる一酸化炭素が体内にあると酸素不足になり、肌の血色を悪くします。
禁煙すると、血液中の酸素量が増え、酸素や栄養の供給が改善されます。その結果、くすんでいた肌が、徐々に明るさを取り戻していきます。鏡を見たときに、顔色の変化を感じ始めるでしょう。
さらに、禁煙によって体内の毒素が排出されると、肝機能も改善されます。肝臓は体内の解毒作用を担う重要な臓器であり、機能が向上すれば肌の調子が良くなります。全体的に肌のトーンが明るくなり、健康的で生き生きとした印象に変わっていきます。
肌のハリが回復する
禁煙によって、失われていた肌のハリが徐々に回復していきます。
タバコを吸うと血行が悪くなり、肌の弾力を保つコラーゲンの生成を妨げます。禁煙することで、肌のハリや弾力が改善されていきます。
禁煙により、体内の水分バランスも整います。タバコに含まれるニコチンは、体内の水分を奪う作用があるため、禁煙によって適切な水分量が保たれるようになります。肌の内側から潤いが増し、ふっくらとしたハリのある肌に変化していきます。肌のつや感も向上し、若々しい印象を取り戻せるようになります。
肌のくすみが良くなる
禁煙を続けると、肌のくすみが改善されていきます。
タバコの主成分であるニコチンによって、血流が悪くなって肌に栄養が届かなくなると、くすみの原因となります。禁煙をすれば血流が良くなるため、肌の再生能力が活性化されます。肌のトーンが明るくなり、くすみが良くなるのを感じられるでしょう。
また、禁煙は体内の炎症を抑える効果もあります。喫煙は、肌のくすみや赤みの原因となります。日本人の女性の顔では、非喫煙者に比べて、肌の赤みの量が喫煙者に多いと報告されています。禁煙によってビタミンCの吸収率が上がるため、肌の透明感が増し、全体的な肌質が改善されていきます。結果として、より健康的で輝きのある肌を手に入れることができます。
しわやたるみが改善する
禁煙を続けると、しわやたるみの改善も期待できます。
タバコに含まれるタールは、肌の弾力を保つコラーゲンやエラスチンを破壊するため、しわやたるみの原因となります。禁煙によって、これらの成分の生成が回復し、肌の弾力が徐々に良くなります。とくに、目の周りや口元など、表情じわが出やすい部分での改善がみられるでしょう。
また、禁煙は肌の血流を改善し、細胞の再生を促進します。新しい健康な肌細胞が生まれ、古い角質がスムーズにはがれ落ちるようになります。結果として、肌表面のきめが整い、細かいしわが目立たなくなっていきます。さらに、表情筋の緊張も和らぐため、深いしわの形成も抑えられ、全体的に若々しい印象の肌に変化していきます。
禁煙が身体に与える影響
禁煙を始めると肌の改善だけでなく、身体にもさまざまな良い影響が現れます。禁煙によって得られる身体への効果には、主に3つあります。
- 咳や痰が改善される
- 風邪にかかりにくくなる
- 血圧や脈拍が正常になる
咳や痰が改善される
禁煙して早くて1ヶ月経つと、咳や痰の改善に気づくでしょう。喫煙は気道や肺に刺激を与え、炎症を起こします。気道が炎症を起こすと、痰が増えて咳が出るようになります。
また、酸素と炭酸ガスの交換をする肺胞が破壊されると、肺が部分的に壊れてまだらになり、ガス交換が悪くなるため、酸素を十分に取り込めなくなります。息切れも改善され、階段の上り下りなどがしやすくなったと感じる方もいるでしょう。これらの変化は、肺が自然治癒力を発揮して、ダメージを修復し始めた結果となります。
禁煙によって肺の機能を取り戻し、気道に入った異物を効果的に排出できるようになります。その結果、呼吸がしやすくなり、運動するときの息切れも減っていきます。
風邪にかかりにくくなる
禁煙を続けると、風邪などの感染症にかかりにくくなります。免疫システムが正常に機能し始めることが、きっかけとなります。
タバコに含まれる有害物質は、免疫力を弱めてしまいますが、禁煙によって回復するようになります。
たとえば、鼻や喉の粘膜が健康になり、ウイルスや細菌の侵入を防ぐ能力が高まります。また、肺の繊毛が正常に働き始め、気道に入った異物を効果的に排出できるようになります。
結果として、風邪やインフルエンザなどにかかりにくくなり、かかっても症状が軽くなる傾向にあります。
血圧や脈拍が正常になる
禁煙を始めると、血圧や脈拍が正常な範囲に戻り始めます。
たとえば、禁煙後20分程度で、早くも血圧と脈拍が低下し始めます。24時間経つと、心臓発作のリスクが減少します。2〜3週間後には、血液循環が改善され、歩行などの軽い運動をしやすくなります。[8]
タバコに含まれるニコチンには、血管を収縮させる作用があります。そのため、喫煙者は高血圧になりやすく、心臓に負担がかかりやすい状態です。禁煙によって、血管が徐々に正常な状態に戻り、血液の流れがスムーズになります。その結果、血圧が下がり、脈拍も落ち着いてくるようになります。
とくに運動するときの心拍数の上昇が抑えられ、より長時間の運動が可能になったと感じる方もいるでしょう。これらの変化は、心臓病や脳卒中のリスクを下げることにつながります。
禁煙する方法
禁煙を成功させるためには、適切な方法と強い意志が必要です。
まず、禁煙の開始日を決めて、周囲の人に宣言することが大切です。自身の決意を強めるとともに、周囲のサポートを得やすくなります。また、タバコを吸いたくなったら、他の行動で代用しましょう。コーヒーを紅茶に代えたり、洗顔や歯磨きをしたりしてみてください。
自力で禁煙するのが難しいと感じる方は、禁煙治療も検討しましょう。以下の条件を満たすと、12週間に5回行われる禁煙治療に健康保険が適用されます。
- ニコチン依存症に係るスクリーニングテストで5点以上、ニコチン依存症と診断された
- 35歳以上で、1日の喫煙本数×喫煙年数が200以上
- すぐに禁煙することを希望している
- 「禁煙治療のための標準手順書」に則った禁煙治療について説明を受け、治療を受けることを文書により同意した方
医療機関での専門的なサポートを受ければ、より確実に禁煙を成功させることができます。
禁煙しても肌に変化が見られないときの対処法
禁煙を始めても、すぐに肌の変化が現れないケースがあります。そんなときは、以下の5つの対処法を試してみましょう。
- ビタミンCを摂る
- 紫外線対策をする
- スキンケアを丁寧に行う
- 6時間以上の睡眠をとる
- 食事の栄養バランスを考える
方法を組み合わせれば、禁煙による肌の改善効果をさらに高められます。
ビタミンCを摂る
肌の調子が良くないときは、ビタミンCを摂取しましょう。
タバコは、体内にあるビタミンCを奪い取ってしまいます。ビタミンCは肌の再生や美白に効果があり、肌の回復を促進します。レモンやグレープフルーツなどの柑橘類、キウイやイチゴなどの果物を積極的に食べるようにしましょう。また、ブロッコリーやパプリカなどの野菜にもビタミンCが豊富に含まれています。
サプリメントでの摂取も効果的ですが、食事からの摂取を基本とし、1日の推奨量である100mg程度を目安に摂るようにしてください。
紫外線対策をする
肌をきれいにするために大切なのが、紫外線対策です。紫外線はビタミンDを皮膚で合成するために必要ですが、浴びすぎると日焼け、しわ、シミなどの原因となります。
外出するときは、必ず日焼け止めを塗りましょう。汗をかいたり、手や洋服に触れたりすると日焼け止めが落ちるので、2~3時間ごとに塗り直すのがおすすめです。また、帽子やサングラスの着用も効果的です。とくに、10時から14時の間は紫外線が強いため、できるだけ日陰を歩くなどの工夫をしましょう。
これらの対策を続けると、しわやシミの予防につながり、肌の回復をサポートするでしょう。
スキンケアを丁寧に行う
きれいな肌になるためには、丁寧なスキンケアが欠かせません。
朝晩の洗顔を欠かさず行い、毛穴に詰まった汚れをしっかり落とします。次に、化粧水で肌を整えた後、美容液や乳液、クリームで保湿します。とくに、ヒアルロン酸やセラミドなどの保湿成分が含まれた製品を選ぶと効果的です。メイクを落とさずに寝ると、毛穴に汚れがつまってしまうため、どんなに眠くてもメイクを落としてから寝るようにしましょう。[12]
また、週に1〜2回はパックを使用し、集中的に保湿するのもおすすめです。丁寧なスキンケアを続けると、肌のハリや潤いが改善され、禁煙による肌の変化を実感しやすくなります。
6時間以上の睡眠をとる
十分な睡眠も、肌の回復に重要な役割を果たします。
22~3時は「睡眠のゴールデンタイム」と呼ばれ、成長ホルモンの分泌が盛んになります。成長ホルモンが増えると、肌のターンオーバーを促進させるため、6時間以上の睡眠をとるようにしましょう。
また、睡眠の質を高めるために、就寝時間を同じにし、寝る1時間前はスマホやパソコンの使用を控えてください。スマホに含まれるブルーライトは、体内時計に影響を及ぼします。また、部屋を暗くし、適度な温度と湿度を保つことも大切です。
睡眠習慣を続けると、肌のくすみや疲れ顔が改善され、禁煙による肌の変化がより現れるようになります。
食事の栄養バランスを考える
栄養バランスの取れた食事は、肌をきれいにするために有効です。
とくにビタミン、たんぱく質をバランスよく摂取することで、肌の再生を促進し、禁煙による効果を高められます。たとえば、以下の食材を摂取するように意識しましょう。
- 納豆
- 牛乳
- チーズ
- サケ
- サバ
- マグロ
- カツオ
- ヨーグルト
- アーモンド
- 肉
- 卵
- 魚
- 納豆
- 豆腐
- おから
- 牛乳
- チーズ
- ヨーグルト
栄養を考えた食生活を続ければ、肌の調子が整い、禁煙による肌の変化がより早く現れるようになります。
禁煙で肌を綺麗にしたい方は美肌薬がおすすめ
禁煙してから肌がきれいになるまでの期間は、個人差もありますが1ヶ月程度です。禁煙をすれば、肌のくすみやハリが改善され、ニキビの減少につながります。ビタミンCを摂ったり、紫外線対策をしたりすれば、より肌の調子が良くなるでしょう。
DMMオンラインクリニックなら、スマホやパソコンから24時間いつでも受診可能。医師があなたの肌状態を丁寧に診断し、診察料0円で最適な処方薬を提案します。
処方された薬は最短当日に自宅へ配送されるため、すぐにケアを始めたい方でも利用しやすいです。
禁煙をして、自己ケアを行っても思うような肌の改善が見られないときは、皮膚科の受診を検討しましょう。皮膚科では、専門的な観点から肌の状態を診断し、適切な治療法を提案してくれます。
【参考文献】
[1]【十日町】あなたも禁煙してみませんか?~健康のために~|新潟県ホームページ
https://www.pref.niigata.lg.jp/sec/tokamachi_kenkou/1196612150201.html
[2]皮膚から老化細胞が排除されるメカニズムを解明|藤田医科大学
https://www.fujita-hu.ac.jp/news/j93sdv000000atmf.html
[3]一酸化炭素|e-ヘルスネット(厚生労働省)
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/tobacco/yt-004.html
[4]体を整え、美肌を導く|日本メディカルハーブ協会
https://www.medicalherb.or.jp/archives/160097
[5]女性とたばこ|三鷹市
https://www.city.mitaka.lg.jp/c_service/097/097521.html
[6]豆知識 タバコはお肌にも大敵!|藤井寺市医師会
http://www.fujiidera-med.or.jp/mame/mame131228.html
[7]たばこの害と禁煙のすすめ|独立行政法人環境再生保全機構
https://www.erca.go.jp/yobou/zensoku/sukoyaka/column/202008_1
[8]禁煙の効果|e-ヘルスネット(厚生労働省)
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/tobacco/t-08-001.html
[9]喫煙と循環器疾患|e-ヘルスネット(厚生労働省)
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/tobacco/t-03-002.html
[10]禁煙の準備 – 禁煙7日前から行う、禁煙のコツを教えます!《準備編》|e-ヘルスネット(厚生労働省)
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/tobacco/t-06-002.html
[11]禁煙治療ってどんなもの?|e-ヘルスネット(厚生労働省)
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/tobacco/t-06-007.html
[12]肌トラブルの原因と解消法|日本女子大学健康サポートグループ
https://mcm-www.jwu.ac.jp/~maruyama/hadaare-kaisyou.html
[13]日本人の食事摂取基準(2020年版)
https://www.mhlw.go.jp/content/10904750/000586553.pdf
[14]紫外線環境保健マニュアル2020|環境省
https://www.env.go.jp/content/900410650.pdf
[15]健康づくりのための睡眠ガイド2023
https://www.mhlw.go.jp/content/10904750/001181265.pdf
[16]肌トラブル解消にオススメの食品|日本女子大学健康サポートグループ