「鼻水がとまらない……また花粉症だ」
「花粉症の目のかゆみを抑えたい……」
花粉症に悩まされる季節、つらい症状をどうにかして和らげたいと思っている方もいるのではないでしょうか。
花粉症の主な治し方には、対症療法と根治療法の2つがあります。
すぐに症状を和らげたいか、根本から改善したいかによって、治療を選択することが大切です。
この記事では、医療機関での花粉症の治し方や予防方法、医療機関を受診するタイミングについて解説します。
つらい季節を少しでも快適に過ごせるよう、この記事を読んでご自身に合った対策を見つけてください。
この記事の監修者
国家公務員共済組合連合会虎の門病院 救急科部長
東京大学医学部救急医学 非常勤講師
軍神 正隆(ぐんしん まさたか)
1995年長崎大学医学部卒業。亀田総合病院臨床研修後、東京大学医学部救急医学入局。米国ピッツバーグ大学UPMCメディカルセンター内科、米国カリフォルニア大学UCLAメディカルセンター救急科、米国ジョンズ・ホプキンス大学ブルームバーグ校公衆衛生学MPH大学院を経て、東京大学医学部救急医学講師。日本救急医学会認定救急科専門医・指導医。2019年より現職。
医療機関での花粉症の治し方
花粉症の治療には、主に対症療法と根治療法があります。
これらの治療法を正しく理解し、ご自身に合った方法を選択することが重要です。
対症療法
対症療法は、花粉症の症状を改善する治療法です。つらい症状をすぐに和らげたい方に適しています。
基本的には薬物療法で、主に次の2種類のお薬が用いられます。
- 抗ヒスタミン薬
- 鼻噴霧用ステロイド薬
これらを服用すると、くしゃみや鼻水、目のかゆみなどの症状を効果的に抑えられます。
抗ヒスタミン薬には第1世代と第2世代があり、鼻水の症状が強い人に処方されるのは第2世代抗ヒスタミン薬です。
抗ヒスタミン薬は副作用として眠気が出るケースがありますが、鼻噴霧用ステロイド薬は血液中に入らないため、副作用は少ないとされています。[1]
花粉の飛散時期が近づいたら、早めに受診してお薬を処方してもらいましょう。症状が出る前から、お薬を服用し始めることが大切です。前もってお薬を飲んでおけば、症状の悪化を防げます。
根治療法
根治療法は、花粉症の原因そのものにアプローチする治療法です。治療を終えた後も効果を期待できますが、3~5年ほど時間がかかるのが特徴です。
代表的な根治療法として、アレルゲン免疫療法があります。少量の花粉エキスを、濃度を少しずつ上げながら身体に投与して、花粉に慣れさせていく方法です。[1]
アレルゲン免疫療法には、舌下免疫療法や皮下免疫療法などの種類があります。舌下免疫療法では、毎日自宅でお薬を舌下に投与するだけなので、比較的手軽に続けられます。[2]
一方、皮下免疫療法は定期的に医療機関で注射を受けなければなりません。[3]
根治療法に即効性はありませんが、長期的には花粉症の症状を改善できるようになります。
花粉症になるメカニズム
花粉症は、花粉に対する過剰な免疫反応によって引き起こされる症状です。身体が花粉を「敵」と認識してしまうことから始まります。
まず、花粉が体内に入ると、免疫システムが異物と認識してIgE抗体を作り出します。次に、IgE抗体が鼻の粘膜の中でアレルギー細胞の肥満細胞に結合します。
そうして再び花粉が体内に入ると、肥満細胞に結合したIgE抗体が反応してヒスタミンという化学物質が放出され、さまざまな症状を引き起こします。
たとえば、ヒスタミンの放出により、鼻水やくしゃみ、目のかゆみなどの症状が現れます。また、鼻の粘膜が腫れると鼻づまりが起こります。
これら花粉症の症状は、身体を守るための反応です。体内に入る花粉を外へ排出するためにあらゆる症状を引き起こしますが、過剰になると不快な症状として現れます。[1][4]
花粉症を引き起こす主な花粉の種類
日本にはさまざまな種類の花粉があります。主に花粉症を引き起こすのは、春先に飛散するものから季節順に、次の5つです。
スギ
花粉症の患者さまの約70%が、スギ花粉が原因で発症しています。[1]飛散時期は地域によって異なりますが、主に2〜4月です。
スギ花粉の大きさは30μm(マイクロメートル)と小さく、風に乗って遠くまで飛ぶため、山間部のスギ林から都市部まで飛んでくることもあります。スギの木が近くになくても、花粉症の症状が出る可能性があります。[5]
症状は、くしゃみや鼻水、目のかゆみ、涙目などです。[4]
スギ花粉を放出する雄花は、7月から形成され、11月頃には花粉が成熟します。その後、気温の低下や日照時間の減少によって、雄花は休眠状態になりますが、冬の寒さにさらされると覚醒し、花粉の飛散に向けた準備を始めます。[5]
ヒノキ
ヒノキ花粉は、花粉症を引き起こす原因です。飛散時期は主に3〜5月で、スギ花粉の飛散時期と重なる時期があります。特に3月下旬〜4月までがピークとされています。[6]
ヒノキ花粉の大きさは28〜34μmで、マスクや眼鏡などでの防御が難しいのが特徴です。また、アレルギーを引き起こすスギ花粉とヒノキ花粉の原因物質は似ています。そのため、花粉症を発症する人の中には、両方に反応してしまうケースも多いです。[7]
症状はスギ花粉症とよく似ていて、くしゃみや鼻水、目のかゆみなどがあります。
ヨモギ
ヨモギ花粉は、主に夏〜秋にかけて飛散する花粉で、8~10月が飛散のピークとなります。スギやヒノキなどの春の花粉症とは、異なる時期に症状が出るのが特徴です。[1][6]
ヨモギはキク科の植物で、大きさは約30μmです。畑や道端、土手、空き地などに広く分布しています。[8]そのため、都市部でも花粉症の症状が出やすいとされています。
ヨモギ花粉症の症状は、他の花粉症と同様に、くしゃみや鼻水、目のかゆみが現れます。
カモガヤ
カモガヤはイネ科の植物で、主に5〜7月にかけて花粉が飛散します。初夏の花粉症の原因として有名です。[1][6]
カモガヤの大きさは、60〜120cmほどです。公園や河川敷などでよくみられ、都市部の公園などにも植えられています。そのため、都市部でも花粉症の症状が出ることがあります。
カモガヤ花粉症の症状はスギ花粉症とほとんど同じで、くしゃみや鼻水、目のかゆみなどが主です。花粉に触ると皮膚に症状が出るケースもあるため、触らないようご注意ください。[9]
ブタクサ
ブタクサ花粉は、秋の花粉症の代表的な原因です。主な飛散時期は8〜10月です。北アメリカ原産の植物ですが、日本にも分布しています。
ブタクサは荒れ地や河川敷などでよくみられる雑草で、都市部の空き地などにも生えています。[10]花粉の大きさが約20μmと小さいため、遠くまで飛散するのが特徴です。[8]
ブタクサ花粉症を発症する人の中には、スイカやメロンなどウリ科の食べ物を食べると、口の中がかゆくなるケースがあります。これは口腔アレルギー症候群といわれ、果物や野菜に含まれる原因物質と花粉が似ているため起こってしまいます。[10][11]
花粉症の予防方法
花粉症の症状を和らげるためには、以下の5つの予防方法が効果的です。
これらの方法を組み合わせると、より効果的に花粉症対策ができます。
マスクや眼鏡を着用する
まず最も基本的な予防法として、マスクや眼鏡の着用があります。
マスクは、鼻や口から花粉が侵入するのを防ぎます。とくに、花粉対策用の高機能マスクを使用すると、より効果的です。[12]
マスクは花粉が多いときに、吸い込む花粉をおよそ3分の1から6分の1に減らし、鼻の症状を少なくすると期待されています。[11]
眼鏡は、目に花粉が入るのを防ぎます。通常の眼鏡でも効果はありますが、花粉症用のゴーグル型眼鏡を使用すると、さらに効果的です。ゴーグル型なので、横からの花粉の侵入も防げます。[12]
マスクや眼鏡を日頃から着用して、顔に付着する花粉の量を減らしましょう。
帰宅後にすぐ顔を洗う
帰宅してすぐに顔を洗うことは、花粉症対策として大切な予防法です。顔に付いた花粉を素早く除去して、症状の悪化を防ぎます。[1]
顔を洗う前に、手を洗って清潔にしておきましょう。洗顔する際は、ぬるま湯を使用し、目や鼻の周りを丁寧に洗ってください。たとえば、目はまばたきをしながら、鼻は軽く息を吸いながら洗うと効果的です。
また、顔を洗うだけでなく、うがいも忘れずに行いましょう。喉に付着した花粉を洗い流すと、喉の症状を抑えられます。
家で安心して過ごすために、帰宅後はすぐ顔を洗う習慣を身につけましょう。
洗濯物の外干しを控える
花粉症の予防として、洗濯物の外干しを控えるようにしてください。花粉を室内に持ち込む原因となるため、花粉の多い季節は室内干しを心がけましょう。[4]
室内干しをする際は、除湿機や扇風機を使用すると効果的です。除湿機は湿気を取り除いてカビの発生を防ぎ、扇風機は衣類の乾燥を早めることができます。布団や毛布など室内で干すのが難しいものは、コインランドリーにある布団乾燥機を使用してください。
どうしても外干しが必要なときは、花粉の飛散が少ない夜間に干し、早朝に取り込むようにしましょう。取り込んだ後は衣類をよく払って花粉を落とすことが大切です。掃除機やモップをかければ、室内に入った花粉を除去できます。[13]
花粉を室内に持ち込まないよう、洗濯物の外干しは極力控えましょう。
栄養バランスのある食事にする
栄養バランスのある食事は、花粉症の予防に欠かせません。3食しっかり食べることで身体の免疫機能が高まり、症状を和らげるのに役立ちます。
食事は、次のような主食・主菜・副菜のバランスを意識してください。[14]
- 主食:ご飯、パン、麺類など
- 主菜:肉、魚、卵、大豆など
- 副菜:野菜、大豆以外の豆類、きのこ、海藻など
朝は時間や食欲がない方は、バナナやヨーグルトなど食べやすいものを1品だけ取り入れてみましょう。また、間食は1日200kcal以内を目安にして、摂りすぎにはご注意ください。
バランスの良い食事を行い、花粉症の予防に役立てましょう。
お酒の飲み過ぎ・たばこをやめる
お酒の飲み過ぎやたばこは、花粉症の症状を悪化させる原因となります。[15]これらを控えれば、症状の改善が期待できます。
お酒は鼻の粘膜にある毛細血管を広げ、鼻づまりをひどくします。[16]お酒を飲んだ翌日に、鼻づまりがひどくなる経験をした方もいるのではないでしょうか。
たばこは、鼻や気管支の粘膜を傷つけてしまうため、症状を悪化させます。[12]また、喫煙は身体の免疫機能を低下させる原因にもなります。[17]禁煙すると、花粉症の症状が改善されるだけでなく、身体の健康にも良い影響があります。
花粉症の予防という側面でも、節酒・禁煙を心がけましょう。
花粉症で医療機関を受診するタイミング
くしゃみや鼻水などの花粉症の症状はかぜと似ていますが、目のかゆみもあれば花粉症の可能性が高いです。その際は内科やアレルギー科を受診しましょう。
花粉症の治療では、花粉が飛散する前もしくは症状の軽い時からお薬を飲んで予防するのが推奨されています。症状が出るのを遅らせたり、軽くしたりできます。
また、花粉症の症状が重度で、日常生活や仕事に支障をきたすときも受診が必要です。症状が重いときは、耳鼻咽喉科や眼科で診察を受けましょう。[10]
早めに医療機関を受診すれば、適切な治療を受けられ、症状の緩和や悪化の防止につながります。とくに花粉の飛散時期が始まる前に受診すれば、より効果的に予防や治療ができます。
花粉症の治療はDMMオンラインクリニックで
医療機関での花粉症の治し方や予防方法、医療機関を受診するタイミングについて解説しました。
花粉症の治し方には、対症療法と根治療法があります。対症療法はつらい症状をすぐに改善したい方に、根治療法は治療後も花粉症に悩まされたくない方に向いている治療法です。
花粉症を予防するためには、マスクや眼鏡を着用したり、帰宅後にすぐ顔を洗ったりして、目や鼻に花粉をつけないようにしましょう。洗濯物を外干しすると花粉がついてしまうため、室内干しも花粉症の予防に効果的です。
DMMオンラインクリニックでは医薬品を用いた花粉症治療を行っています。医師が患者様のお悩みをヒアリングしたうえで、それぞれに適したお薬を処方いたします。
早期から治療をすれば、症状の悪化を防ぐことが可能です。鼻水やくしゃみ、目のかゆみなどの花粉症の症状がある方は、DMMオンラインクリニックにご相談ください。
【参考文献】
[1]はじめに~花粉症の疫学と治療そしてセルフケア~|厚生労働省
[2]スギ花粉症に対する舌下免疫療法 耳鼻咽喉科|KOMPAS
[3]スギ花粉に対するアレルゲン免疫療法|独立行政法人環境再生保全機構
[4]花粉症対策 スギ花粉症について日常生活でできること|環境省,厚生労働省
[7]ヒノキ花粉症発症に関する新知見 ヒノキ花粉主要アレルゲンCha o 3の同定とその特徴|日本農芸化学会